さて、これだけなら、エステと言うよりは、整体としての効果が期待できそうな雰囲気が漂う。しかし、ちょいと見渡すと、気になるポイントが見つかった。その部分の拡大スキャン写真をご覧いただきたい。そこには、「毎回、ご来店時に経路チェックでお一人おひとりの体質や肥満原因、体調をチェック。気の流れを読み取り、効果的なオンリーワンプログラムを設定します。」とある。そして、そこには電気メーターの付いた機器と、そのセンサーを握る手が写し出されている。“気”? 激胡散臭が立ちこめてきたぞぉ。 その機器、科学では解明されていない“気”とやらを、電気的に処理出来てしまう様だ。すばらしい! まだ解明されていないんよ。それを電子回路で「あらよっと」読み取れるんだから、画期的である。何で、そこまで言い切ってしまうかと言うと、このメーターのお陰だ。これは、どう見ても、鉄芯の周りに稼働コイルがあって、そのコイルに電流が流れると、ぴよぉーんと針が動くという代物だ。ということは、その機器から伸びた黒線と黄線からの、何らかの電気信号を、メーターが程よく振れる程度の電流にする、電子回路が入っていることになる。 で、このカールコードで結ばれたセンサー部は、どんな物なのだろう。真っ先に、そして単純に考えられるのは、電極だ。黄もしくは黒から電流を出力し、体に微弱電流を流し、もう一方でその電流を回収する仕組みである。これならば、体の電気抵抗値をメーターで表示するだけなので簡単だ。大体の抵抗値はあまり変化しないものの、電極の当て方、握り方で、毎回少しは違う値が出るので好都合だろう。ツマミもあるので、振れすぎてしまった時などは、「あららららっ」と電流値を絞ることもできそうだ。 他には、音か? 心臓の鼓動をはじめ脈など、人間はいろいろな音を発している。関節がコキッと鳴るのも経験済みだろう。実は、このセンサーはマイクロホンで、何らかの音を数値化している、というのも考えられる。すると、2本ものセンサーが必要なのかどうかが争点となりそうだが、両方の入力を差分してメーターに表示するなんて芸当なのかもしれない。 あとは、体温か? 温度センサーなら、間接的な接触方法でも良いので、明らかな導電性物質(鉄や銅)をセンサーとしなくてもすむので、胡散臭がいくらか緩和される。温度計の様に、センサーをプラスチックで包むことも可能だ。 何にしても、とりあえず体の2点間を測定しないかぎり、“流れ”を掴むことは無理なので、2本のセンサーが必要となるだろう。しかし、このカールコードは、あまり伸びそうもないので、随分と距離の短い2点間で測定するのだろうなぁ。とにもかくにも、この黄と黒の2本のセンサーは、まだ科学的に解明されていない“気”を、電気信号に変換してくれる素晴しい物の様である(笑)。 で、もうひとつ。広告の真ん中辺に、「痩せやすい体とバランスの良いボディラインを目指しましょう!」と題され「気の流れを整えるパックを塗って筋肉をやわらかくさせた後、体のバランスをケアしていきます!」とある。“気の流れを整えるパック”とは素晴しい。これまた、解明されていないものを、簡単に操れる流動物質と思われる物の登場だ(笑)。 このパックと、経路チェックマシンの、2つだけを解釈すると、どうやら“気”とやらは、体の表面のみを伝っている様だ。なぜなら、パックは体の表面に塗る物で、ほぼ浸透しないと考えれば、体の表面にしか影響を及ぼさない。故に、“気の流れを整える”のならば、“気”は体の表面しか流れないことになる。磁気を帯びているならば、少しは浸透するかもしれないが、パックを塗付するという程度では、体を突き抜けるくらいの威力を発揮するのは無理である。すると残るは放射線系しか思いつかない。こっちの方が無理だ、白血病やガンで痩せるかもしれないが、いや、命に関わる。 という訳で、この業界も競争が激しく、何らかの特色を出さないと存続していけないのかもしれないが、写真に写っている3人の例が、特殊例ではなく、平均的な結果であるのならば、充分に効果的なエステティックと言えるだろう。なにも、解明もされていない変なものの威信を借りることもあるまい。でも、エステティックという形態をとっているのには理由があるのかな? イメージ戦略として、だけならいいんだけど、骨盤矯正するのに、整体の免許が無いなんてことはないよねぇ。
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