落語? いえいえ落話です
Rakugo? No No Rakuwa.

アシデッカ共和国

吉川友梨ちゃん捜索にご協力を

球技と言えば「サッカー」しか知らない小国での、選手と監督のお噺です。

「コホン、あー、みんな聞いてくれ。我がアシデッカ共和国では、サッカーが国技であるにもかかわらず、未だワールドカップの一次予選すら突破したことがない。という訳で、『5つの輪』と呼ばれる大会で、オリンピックという競技のベースボールという種目で、カップを狙おうという事になった。なんでも、金・銀・銅のカップがあって、1位にならなくても、それぞれにカップが貰えて、しかも返さなくていいらしい。ここがワールドカップと、チト違うな。そんでもって、肝心のベースボールとやらは、競技人口が少なくて、予選突破が簡単らしいぞ。ここだけの話しだがなぁ、ありゃーオカマがやる種目らしい。そうじゃなかったら、世界中で盛んなはずだからな。」
「えぇー、監督ぅー、あっしらに女装でもしろって言うんですかぁー。」
「いやいや、格好は何でもいいらしいから、安心しろ。(不思議そうに)だがなぁ、トヨタカップの聖地ハポンでは盛んらしいんだ。それがいまいち解せねぇ。」
「そりゃー、オカマがいっぱいの国で決勝戦をやった方が、血を見ねぇーで済むからじゃねぇーですかい?」
「なるほど、そうか! 道理でハポンはサッカーが弱い訳だ。そう言えば、ハポンから、アメーリカに行って活躍しているベースボール選手が、『ゴジィーラ』なんて、女っぽい名前を付けられちまったらしい。」
「本名は『ゴジィーロ』って言うのかなぁ?」 
「さぁーなぁー、イタリア人じゃぁねぇし…。で、だなぁ、国王がおっしゃるには、『オカマの種目らしいから、おまえたちなら、ちょっと手加減する位でも、ペレになれるだろう。』ということなんだ。どうだ、やってみないか?」
「ペレは… オカマさんだったんですかい?」
「いやー、たぶん例えだろう? 国王もあまりご存じではないらしいから。」
「で、監督、そのベーボールってのは、どんなもんなんですかい?」
「俺も聞いた話しなんだが、拳よりちょっと大きめで、固いボールを使うらしい。」
「うわっ、蹴る時痛そう。」
「いや、蹴らんで、誰かが投げて、それを棒で打つんだそうだ。」
「投げて…、打つ…? っー事は、キーパーが投げて、それを敵が棒でシュートするのかなぁ? へんなPKだなぁ。何回戦なんですかい?」
「9回だって。」
「PKが9回じゃぁ、すぐ終わっちゃうなぁ。」
「PK戦じゃぁーねぇってよ。で、キーパーもいねぇらしい。」
「えぇ! キーパーがいねぇのに、どうやってゴールを守るんでぇ?」
「うーん、そのゴールポストもねぇんだ。」
「ゴールがなけりゃぁ、点が入れられねぇじゃねぇですかぁ。」
「あのー、監督ぅ。それたぶんちょっと違いますよぉ。あっしが聞いた話しでは、ボールは足元に置いたまま、棒で力一杯、原っぱに向けて打つんですよ。」
「で、そのボールはどうするんだい?」
「追いかけて行って、またそこから、力一杯打つんです。」
「いつまで? どこまで?」
「最後の丘に、ボールが入るくらいの穴が開いているんで、それに最後まで、棒を使って入れるらしいんです。」
「気が遠くなるなぁ。しかもゴールポスト、小せぇー。」
「でも、敵もいなけりゃ、投げる奴もいねぇし、難しくてもいずれは入るよなぁ。そうすれば、とりあえず1点だろう? どうやって勝敗決めんだ?」
「どれだけ棒で打つ回数が少ないか、を競うらしいんです。」
「っー事は、いつまでもドリブルしてちゃぁーいけねぇって事? 難しいなぁ。」
「いやー、なんか違うんじゃねぇかぁー。」
「監督ぅー、あっしが聞いた話しじゃぁー、そいつは馬に乗ってやるらしいですぜ。」
「馬ぁー!? 馬がボール投げて、棒で打つんかい?」
「しっかりして下さいよ監督。いっくら何でも、そりゃぁ無理でしょ。馬に乗った選手が、棒切れを振り回す、って事だったかなぁ…。」
「で、やっぱり原っぱでやるんかい?」
「馬に乗ってやるぐらいだから、相当遠くまで行くんでしょうねぇ。」
「1試合、何日かかるんだ? 試合中に出張手当出ちまうじゃねぇか。」
「前後半で、また戻って来るんじゃねぇですかい?」
「アウエーで、一泊するのがハーフタイムか…。こりゃ大変な事になってきたな。」
「ちょっと待って下さいよぉ。隣国と試合するなら、まだいいですけど、遠い国とやるなら、馬も俺らも死んじゃいますよ。馬の交代はできるんですか?」
「やっぱり3頭までだろう。親善試合で5頭ってところかな、たぶん…。」
「それじゃぁー無理ですよぉ。あっそうだ! ラクダに色でも塗って、馬だって言い張りましょうか。」
「それいいねぇ。棒で打つ回数を競うなら、少しぐらい遅くっても、構わねぇだろう。それでいこう。」
「ところで監督。ベースボールの『ベース』って何ですかい?」
「あっ、そうそう、そう言えば、そのベースって言う四角い板を、順番に3枚踏んづけて進むって言われたっけなぁ。」
「そのベースって言うのは、どこにあるんで?」
「さぁーなぁー、通り道にあるんじゃねぇのかぁ?」
「宿場にあるんじゃねぇですかい?」
「そうか、チェックポイントみたいなもんだろうな。」
「でも、それの在りかを知らされてなきゃぁ、自分たちで探すんですよねぇ。こりゃぁ厄介ですぜぇ。」
「地図ぐらい、『5つの輪』から貰えるんだろうよ。」
「それ、映画で見たことありますよ、『インディアン・ジョーズ』とかいうので、地図を頼りに捜し物するんです。ジャングルとか、罠とか、呪文に呪いに怪物って、ハラハラドキドキですよぉ。」
「でもって、インディアンとジョーズに襲われるのかよ。嫌だなぁオイ。生きて帰れるのかよぉ。」
「じゃぁー、ベースは、あらかじめ監督に探しといてもらうって事で…。」
「俺がぁ!? イヤだよぉー!」
「だって俺ら選手だしぃ、下準備まではなぁー。」(と顔を見合わせる)
「薄情な奴らだなぁ。俺がジョーズに食われても、いいってんだなぁ、ウンウンって…。もぉーいい! この話し『五輪算(御破算)』にしてくれ。」

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