R.Feynkidの
ぶやき

SL列車の乗り味

 SL列車に乗ったことがあるだろうか? ここのところ、ぽつん、ぽつんと、乗車できる路線があり、「乗ったことあるよん。」という方も、増えつつあると思われる。私も今回、その仲間入りである。
 さて、リニアモーターカーに続き、こういう乗り物モノの場合は、我が兄が主導だ。今回も、例に漏れず、1歳10ヶ月の甥が「シュッシュッポッポ」という事で、秩父鉄道のSLパレオエクスプレスに乗りに行く事になった。
 予定では、熊谷駅より乗車し、御花畑駅で降車し、羊山へ芝桜を見に行く様だ。ネットで予約しておくと、缶バッチがもらえるらしい。抜け目は無い。
SLパレオエクスプレス乗車記念証と缶バッチ  秩父鉄道の熊谷駅改札には、すでにSLを乗りに来たと思われる人々で、ガヤガヤ状態だ。チケットの買い方が分からない(笑)。駅員曰く、普通乗車券を購入して、改札を入ってから、SL乗車券を購入するらしい。で、御花畑駅までは、片道840円"も"する。"も"と言っていいのか、どうだかだが、とにかく「うおっ」と思ったのが、正直なところだ。みんな、窓口に並んでいる。なんだろうと思ったら、1日乗車券を買っている様だ。乗り放題で1,400円って、単純に往復するだけでも、元取れちゃうじゃん。混乱の中、急遽「1日券にしよう。元取れちゃうよ。」と叫んで、それにすることになった。ちなみに、パスモもスイカも使えない。SLのノスタルジーに浸る前に、改札というノスタルジーに浸れる。
 改札を入ると、目の前で、SLの乗車券を販売している。予約票(?)を見せると、人数分の缶バッチと、乗車記念証をもらっていた。さぁ、自由席なので、ホームで並ばねば。階段を下りて進むと、列車としては、1号車から4号車の順番になる。もう、乗客が結構並んでいるので、ムリムリに4号車(最後尾)乗り口まで進んでみた。まだ、ほとんど乗客がいない。
 待っていると、兄が「誰も、パンフレットの一つも持って来なかったのかよ。」と文句である。仕方が無いので、最後尾から、改札まで戻って、パンフレットを一通りもらってきた。御花畑駅から羊山の地図が欲しかった様だ。
 いよいよ、入線である。昔むかし、(たぶん)東武線で貨車を引いていた電気機関車に引かれて、ゆるゆると入ってくる。何か、ゴォーと音を立てている。んがっ、最後尾車両は電源車じゃん。ディーゼル発電機が唸っているのだ。
 なにはともあれ、乗り込み、席を確保しなければ。…という程、混んでいなかった。座っても、ディーゼルの音がねぇ。最後尾は、何に乗りに来たのか、わからなくなる特等車だ(笑)。
 そんな事には、めげない。さぁ、出発進行である。ちょっと前進して、電気機関車を切り離す。すぐに、動き出した。「SLは乗ったら、ただの列車。SLは見るもんだよ。」という先入観があると思うが、それは間違いだ。『SLは乗ってもSLである。』呑気なのは、効率の悪さで仕方が無いとしても、特筆すべきは、SLのトルクのかかり方が、独特な事だ。まるで舟を漕いでいる様である。力がかかっている時は加速し、それ以外の時間は、慣性で進む(厳密には減速)。ある程度の速度になるまで、その周期を縮めながら、繰り返し、シュッシュッポッポッするのだ。これは、具合の悪い時では辛い(涙)。悪くなくても、長時間乗車は疲れそうだ。そして、意図的かもしれないが、なかなか加速しない。呑気である。途中、普通列車に抜かれるための、停車があるのも頷ける。これは、電車に乗っている通常の乗客としては、待っていられない。
 しばらくすると、車内販売が回って来る。どう見ても、DIYセンターで揃えた、棚ワゴンとか、手作り感バッチリのものもある。車内に流れてくるのは、秩父が誇る大スター林家たい平師匠の声だ。落語家に解説させても、信憑性に欠けると思うのだか。
 窓の外を見れば、"歓迎"と貼った、ミニバンのアメ車が、列車の横を併走し、運転手が手を振ってくれている。肉球グローブでニッコリはいいから、前を向いて、安全運転をしていただきたい。気になるのは、沿線の洗濯物である。列車の窓を開ければ、石炭のニオイが(恐らくPM2.5と共に)入ってくる。1往復とはいえ、何らかの付着があるだろう。
 途中、普通列車に追い越されるために、10分位、停車する駅がある。記念撮影のチャンス駅だ。乗り遅れない様に、と車内アナウンスがあるのが、いかにも日本らしい。4号車とはいえ、停車する前から、準備をして、降りたら、早歩きで、蒸気機関車へ向かわないと、間に合いそうもない。事実、もう人だかりであった。とにかく撮る(笑)。甥をダッコさせて、撮る(笑)。甥は運転席が気になる様だ。親に似て、将来は機械イジリになる事だろう。機関士達が勢揃いという、ニクい演出もいい。途中から乗る人もいる。後発の普通列車が追い着くので、出発シーンを撮ってから乗る、という荒業も有りだ。
御花畑駅を出発するSLパレオエクスプレス上り列車  今回は、途中から雨が降る・すんごく寒いという、行楽には向かない日になってしまって、更に、決して快適では無いSL体験という、試練にも思える旅行となった。しかし、あの独特の乗り味は、それらを乗り越えてでも、有益な体験となったのではないだろうか。是非、乗り物好きに限らず、バーチャルでは無い、体感を体験していただきたい。

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(C)2013 Richard Feynkid