R.Feynkidの
ぶやき

リニアモーターカーで500km/h! Forward to the Future

Linear-Express Passenger Ticket  正直な話し、リニアモーターカーなんて、まだ研究者のおもちゃで、モノレールの軌道みなたいなところを、空飛ばないUFOが無人で「シュパー」なんていっている程度の認識しかなかった。なんと!そんなリニアモーターカーの試乗会に当たって、乗れるんだという。これは、何としても行かねばなるまい。仕事なんかしている場合ではないぞ。
 さて、当日は兄の車で向かうことになった。朝6時には出発し、中央道を大月で降り、ちょいと行ったところに、その場所はある。一ケ所、交差点を間違えなければ、後は案内が出ているので、迷うことはない。農道にしか見えない道(失礼)を通り、中央道をくぐって、坂を上がった所だ。もう、車の誘導員が立っている。駐車場が少ないと書いてあったので、心配していたが、それなりに大きかったし、朝早かったこともあってか、余裕で止められた。
展望台への階段  車を降りて、研究所(でいいのかな?)の方へ向かうと、もうワラワラと人がいる。展望室は、まだ開いていない。その入り口は、どうやら売店の様だ。我々は第2便なので、まだまだ時間があるので、第1便が見られるのだが、「ここじゃぁ、見らんないじゃん。」ということで、展望台へ向かうことにした。建物を右目に進んで行くと、階段があり、それを降りて、リニアの軌道の下をくぐり、また、階段を上ると、ちょっとした広場の様になっている。ただし、階段も含めて砂利なので、どんなに着飾って行きたくても、靴だけは歩きやすいものにしよう。ヒールなんか厳禁だ。
 そこのベンチに座って待つことにしたのだが、梅雨の時期とはいえ、思いっきり晴れてしまったので暑い。飲み物をとって来ようと、母と二人で車に戻った。駐車場からも軌道が見えるのだが、そこに、誰が何と言おうとリニアではないものが走ってきた。2トントラックを荷台同士で連結して、その上に『離れにいかが?』の様なプレハブが乗っかっている。母が「えぇー、あれに乗るのぉ?」と言ったが、「んな訳ないだろう。」どう考えても、あれで500km/hは出ない。万が一出てしまったら、F1カーの立場が無いし、同じ様なトラックを使っている宅急便は、かなり怠けていることになる。
 展望台へ戻る途中、売店の前でウロウロしていたら、リニアレディー(でよかったかな?)が出勤してきた。(おぉ、すげぇ、そんな花形な部門なんだ。)と思った。有軌道物としては、最先端技術だもんね。小声で「かっこいい!」なんて声も聞こえてきた。そりゃ、そうだ。レースクイーンじゃないんだから、制服もキリッとキマッてるよ。
 父と母は展望室へ、私は兄のいる展望台へと戻った。展望台で待っている間、何故か辺りにBGMが流れている。80年代を中心とした懐かしい洋楽のヒットチューンである。どうやら、リニアの運行状況を実況(?)してくれるらしい。「車庫から出ました。」なんて言っている。
 第1便がホーム(?)に到着である。そしてスルスルと出て行った。問題は、500km/h走行である。展望台からだと、向かって右のトンネルから、橋を渡って突進して来るのだが、一段高く、そしてそれなりに離れている展望台からでも、「うはっ」という間も無い位の速さで突き抜けて行ってしまう。
 その迫力はイメージしていたものとは、あまりにも懸け離れていた。私のイメージでは、物静かに「シュッ」と、華麗にツバメが抜けて行く様なものだが、実際は、来る前にインバーターの音が辺り一面に「チィー」と鳴り、そして『重』まではいかないが低音の効いた『遠くの雷鳴』みたいな音が、目の前を駆け抜けて行くのである。それもよくわからないうちに…。言わば、『後味しか残らない』感じである。
展望室から見たリニア MLX01-901  そんなんだから、展望室では、アナウンスはあったものの、インバーターの音も聞こえず、いかにも「来るぞ」という走行音も聞こえないので、アッと言う間(前?)に通り過ぎてしまい、その直後には皆、薄笑いが起こり、ほとんどの人は、カメラに収められなかったらしい。善かれと思って造ったんだろうけど、罪作りな展望室になってしまった。
 さて、いよいよ第2便に乗るために、受付に向かう。もう、他の乗客は並んで待っていた。我々もその後ろに並ぶ。入り口では、職員とリニアレディーがお出迎え、そして受付してくれる。応募単位で入場するので、バラバラにならないようにしよう。
 いざ出陣、とはならず、乗り込む前に、結構立派な講議室の様な部屋に通され、プチ座学となった。宮崎時代からの歴史や、現在の技術水準の話しまで、好きな人(特に鉄っちゃん)にはたまらないプロモだ。が、しかし、またしてもショックの追加である。なんと、走り始めは『タイヤ』で走るんだそうな(涙) 私の勝手なイメージでは、「出発進行!」と共に、機体が磁力でフワリと浮き、後は走行系の磁力によって、ニュルンと押し出されるものであった。磁石の同極を近付けて、反発しあう時の様にニュルンと…。まぁいい、諸事情あって、そうなったのだろう。大きく、重くなった機体をいきなり浮かすのは、合理的でないのかもしれない。それよりも、試乗中(約25分)にアンケートを書かなければならないのが、気を重くしている。書く暇無かったらどうしよう。
 で、今度こそ出陣である。きれいな廊下を通り、ジャバラの乗降口がセットされたところから乗り込む。まるで飛行機の様だ。車内も、ちょうどエアバスの雰囲気があり、とても試験車両とは思えない。いや、モニターなんかも装備され、エアバスよりか豪華と言ってもいいだろう。ちなみに、車内をウロウロして、写真撮影等している暇は全く無いし、邪魔だ。なので、横一列の席になった我々は、写真を撮りっこしたりして、発車を待つ。
車内モニターでおいしい所を映してくれる  いよいよ駅(?)から出て、最初は座席進行方向の逆(乗客にとっては後ろ向き)に400km/hで走行するらしい。その前に、私のイメージを打ち砕いた(笑)タイヤで走る。滑走路に向かうジェット機の様だ。そうか!ポイントがあるから、軌道上を走る装備も必要だなぁ。長年研究しているだけあって合理的である。
 「さぁ、来るぞぉ来るぞぉ」と身構えていたら、意外に走り出しは穏やかだった。まぁ、加速マニアだけを乗せている訳ではないので、当たり前と言われればそれまでだが、しかし、その加速は列車の加速とは思えないトルキーなものであった。正に『磁石が反発しあう時のニュルン』という感じだ。
 みるみる加速していく。130km/hぐらいまでは、タイヤで走るらしいのだが、揺れは少なめだ。そして、タイヤノイズが消えた。やっとここからが、リニアらしい走行である(感激涙)。その切り替えの瞬間は実に自然で、変わるのは音だけだ。
 しかし、静かなのは束の間で、更に加速していくと、今度は風切り音と思われる音で、ジェット機に乗っているような錯覚を覚える。そして、あっと言う間に400km/h出てしまっているのだ。よく考えると、この加速は凄いぞ。何でシートベルトが無いんだ。ちょっとだけ見える遠くの景色も見る暇ない位、流れ、そして過ぎ去っていく。しかし、そんな体験も、次に来る500km/hの序章に過ぎなかった。
 (おぉーっと、止まっているうちにアンケートを書かなくちぁ。)という訳で、ちょっと書く。でも、そんなことをしているうちに、500km/h走行とのアナウンスが入る。そう言えば、発車のベルなんかないので、どのタイミングで来るか、イマイチわからない。座っているからいいけど…。
 (おっ!来た!)さっきよりも力強い加速だ。これはヤル気満々の加速だ。タイヤ走行を終えても、ガンガン加速していく。30秒もしないうちに500km/hが出ると、カメラを持っている人は、一斉に車内のデジタルスピードメーターを撮った。
 速度が違うので、単純比較はできないが、東北新幹線の方が、揺れが少ないように感じられる。そして、音もやっぱりジェット旅客機だ。ちょっと残念。しかし、トンネルを抜けると、その(要らない)迫力を打ち消すかの様に、景色が後方へ『飛んで』行く。それはジェット機でも体験できない迫力だ。だって、空を飛行中じゃぁ、建造物が真横数メートルの所をすれ違うことが無いでしょ? 標準でスーパーニアミスみたいなもんである。何だかわからないものが飛んでいくんよ! 橋?駅?、そんなのわかんないって(笑)
先頭車両のネーム  再びトンネルに入ると、中に設置されている11メートル間隔(だったかな?)の蛍光灯は、光の帯になっている。それはちょうど、映画バックトゥザフューチャーで、デロリアンがタイムスリップする直前、『シュバシュバ、バチバチ、ジュバオッ』となる時のイメージだ。スペースシャトルが大気圏に再突入する時も、プラズマが走り、そんな感じになるらしい。あっ、あくまでもイメージで、さすがにプラズマなんか走んないよ(笑)。
 で、そんな速度なもんだから、サラッと試験軌道を走り切ってしまうので、もう、すぐに減速することになる。ちょっとここでも気になるのが、タイヤ走行に戻る時に、これまたジェット機が着陸するかの様な、『ドン』というのが来て、『グッ』と減速することだ。もうここまでくると、印象は空飛ばないジェット機オンリーである。 この感覚だけは、嫌いなので、本当はどうにかして欲しい。素人考えだが、恐らく、タイヤの転がり抵抗のせいだと思うのだが、もし、これが鉄車輪と軌道だったら、急な減速が感じられないんじゃないかな、なんて思う。でも、降りる時のショックが大きいか…。カツーンなんて音もするだろうし、やっぱりダメか。
 いやはや、あっはっはぁー、という感想しか出てこない500km/h体験も終わり、さぁ、駅に戻るのみかな? なんて思っていると、畳み掛ける様な演出が待っていた。帰りは、500km/hまでは出さないが、緩いカーブでの、機体のロール具合を、例の蛍光灯を見ながら、感じて欲しいとの事。おぉ、確かに自分から向かって右側の蛍光灯が上がっていく。結構な傾きだ。接地型の乗り物では、見事ドリフトorスピンという傾きである。スピードと動きをこれでもか、と体験させてくれるJR東海の演出は、まさに試乗の名にふさわしいものだった。現代リニアの美味しい(楽しい?)ところを、余すことなく脳裏に焼き付かせてくれた。
乗車証明書を配布するリニアレディーとリニアモーターカー  降りると、入ってきた方とは違う方(駐車場方面)へ導かれる。その先では、リニアと記念撮影ができるエリアがあり、乗客の殆どが群がっている。よく見ると、やっぱり試験車両だけあって、継ぎはぎの部分がある。こうやって空力をいじっているのだろう。いずれ、あの迫力の風切り音は改善されること間違い無い(と信じている)。その反対の壁では、アンケートを書ききれなかった人が必死に書いている。まぁ、あんな非日常体験中では、アンケートどころではあるまい。そして、そこではリニアレディーから、乗車証明書がもらえる。あらかじめ名前を打ってある無茶苦茶いい代物だ。で、退出は何故か勝手口みたいなところから出る。これで、売店に直接出る構造になっていたら、感動を胸に、おみやげ買いまくりなんだろうなぁ、なんて思っちゃぁ、いけない、いけない(汗)。
 さぁてと、お昼御飯でも、となったが、折角来たのだから、もう一便見て行こうということになった。また、あの展望台へと向かう。
運行予定表  朝一番とは状況がえらく変わって、見物人がワラワラ陣取っている。金網の外まで出て、カメラを構えている。下品だ。400km/h走行の時、「あぁー、ビデオじゃないとダメだぁ」なんて声が聞こえてくる。(ふっふっふっ、500km/hは、そんな甘いもんじゃないぞ。)と思いながらも、カメラを構える。出発のアナウンスが聞こえると、辺りに緊張が走る(走っていたはず)。あのチィー音が聞こえ、いよいよ来るぞ。カメラの電源が自動に切れないように、たまにピントを合わせたりして準備して、早めにシャッターを切るんだぞ、と自分に言い聞かせながら待つ。トンネルを抜けた! 橋まで来た! シャッターチャンス! 若干遅かった…(撃沈)。鼻先のちょこっとが写っていないかもしれない(が、ギリギリ写っていた)。猫が自動車の早さについていけなくて、轢かれてしまうのに似ている。さぁ、じぁ、おみやげ買って帰ろう。
第3便の500km/h走行  帰り途中に、国道沿いに何か昼食がとれるところがあるだろう、なんてユルユルと走ったはいいが、車が止まれる様なところは、ほとんど無いし、あっても「あっ」と言っている間に過ぎてしまう。なので、あてがある人はいいが、無い人は、お弁当を持って見に来よう。ゆっくりできるし、ベターだと思う。でもゴミは持ち帰ってね。ゴミ箱が満パンになってたしぃ。
 という訳で、現代リニアモーターカーは、かなりレベルが高いのであるが、細かいところで、『?』があるのが正直なところである。音や揺れもそうたが、軌道上の安全なんかは、今は短い距離だから2トン車が走っていけばいいが、東京〜名古屋なんて距離になったら、たまんない。更には、障害物がコツンとでも当たれば、相当ふっ飛んでいくことだろう。新幹線のトンネルの壁が剥がれて当たった事が昔あった。もし同じ様なことがあれば、今度は速度が違うので、被害も大きなものになるだろう。SF物に出てくる様な、チューブ状の軌道なんていいかもしれない。いかにも、って感じもするし:-)
 車両やコストパフォーマンスのレベルアップも大きな研究課題かもしれないが、今後はやっぱり安全第一の課題克服ではないだろうか。私としては、まだちょっと不安である。
乗車証明書  だか、そんな不安さえ払拭できれば、世界一の乗り物であることは、間違いない。是非、実用化に向けてGoということになって欲しい。そして、まだ未体験の人は、抽選(私の時は1万分の400位)に当たり体験することをお勧めする。そうは世界一の技術に巡り合えることはない。貴重な記憶の1ページとして、輝くことになるだろう。

追信:見事に日焼けしてしまった。そして、小中学生の夏休み後の様に、皮までむけてしまった。何年ぶりだろう? そんな日焼けになったのは。
 勤務先の専務に話したら、悶えながら「うわぁー、乗りてぇ、1万円出してもいい。」とのこと。上海の400km/hリニアも乗りたかったらしいのだが、時間が無くて乗れなかったという苦い経験もあり、余計に乗りたいようであった。でも抽選…。

もどる

(C)2006 Richard Feynkid