R.Feynkidの
ぶやき

幸せに寄って行く私

 『隣の芝生は青い』よく言われる事だが、私の方の芝生は枯れている様だ。実際、我が家の芝生は一部が枯れて、土が見えてしまっている。気持ちも現実も枯れているなんて、「ひどいじゃないですかぁ。」だ。
 最近、また、ひとり涙してしまった。何者かにタイヤをパンクさせられ、凹んでいる所へ、やる気の無い警官、そして、マフラーが落っこちているのに気が付かず、バックしたところ、当ててしまい、マフラーのテールエンドパイプがグニャ。夜に必死に直し、どうにか走れる様にした。タイヤは7千円ちょい、マフラーは大事には至らなかったが、ヘンな方向にパイプが向いてしまったので、若干ずれてしまった。取り付けステーを自作しなくては、安心できない。
 「そんな事で」と思うかもしれないが、勤務先のパソコンでも凹んだ。話せば長くなってしまうのだが、サーバーにしているパソコンが、停電とほぼ同時に、ネットワークに繋がらなくなったのだ。しかし、元々、このパソコンと、大奮発して購入したギガビットのハブが合わなかったらしい。購入時から、ケーブルによってはリンクしないとか、立ち上げの途中からリンクするとか、「何てピーキーなインターフェイスなんだよ」と思っていた。サポートが来て、マザーボードを丸ごと交換してくれたのだが、ダメだった。相性の問題じゃぁ仕方がない。付き合う前から問題のあった恋人同士の様だ。
 そうなると、とにかく復旧しなければならない。で、白羽の矢が立ったのは、私が使っているパソコンのNICだ。それは元々、設計で使っていたものなので、『ストレスフリーのギガビット』という旗印の元、ギガビットのNICが入れられていたのだ。
 そいつを持っていく事にした。これで、モニターに引き続き、グレードダウンである。というよりか、NICの入っていないLinuxなんて、クリープの入っていないコーヒーどころではない、コーヒーの入っていないコーヒーである。モニター(17inch)だって、工場に譲って、あるのは探してきたジャンク(15inch)だ。その上、NICまで無いなんて。ほんとに「そんな事で」と思うかもしれないが、泣いた。「俺のにはNICも入って無いのかよ」って…。
 そんなこんなの前から、ずっと気になっていた人物がいる。KS貫氏だ。同じフロアで勤務する九州男児だが、(今は)営業成績も振るわず、これと言ってアイドルの様にかっこいい訳でもない(スマン)。馬風師匠を若くした様な感じである。話しが噛み合わない事もあれば、ギャグは滑る。
 送別会(またかよ!)で、偶然にも彼の横に座る事になったので、これはチャンスと「話しをしたいと思ってたんだよ」と伝え、話し始めたのだが、やっぱり、面白くもなんともないのだ。内容が無いよぉ、で、二言三言交わしたら、その内、双方とも全然違う方向を向き、違う人と話し始めてしまった。
 そんな人物なのだが、しかし、思わず寄って行ってしまうのである。答えが、ようやく解った。『満面の笑み』だ。私は、幸せそうな、その顔面に吸い寄せられて行っていたのだ。彼には子供も生まれ、事あるごとに「子供が」「かみさんが」と、実に楽しそうだ。もちろん、彼の芝生は、庭師によってきれいになっている程ではないと思う。前記の様に、成績も振るわない事もあったり、取引先や社内でも楽しい事ばかりではないはずだ。それでも、満面の笑みである。
 私にとって、それは羨ましいのだろう。でも、妬ましくは無い。どちらかと言うと、うれしいのかもしれない。芝生が生えているというだけで、そっちに行って寝転んでみたいのだ。土と落ち葉に埋もれるのは嫌だ。ネイチャー団体じぁあるまいし。
 飢えているのか、現実逃避なのか、ひとときの安堵を求めているのだろうか。彼にとっては迷惑かもしれないが、幸せのお裾分けをもらいに「これからも邪魔するぜぇー。」「邪魔するなら帰ってやぁ。」

追記:訪れない幸せ

 KS貫氏は、朝のテレビの占いで流れたラッキーカラーを、取り入れて、験(げん)を担いでいるらしい。ある時はシャツだったり、ネクタイだったり、小物の色だったりする。
 ある日、「今日は赤かな?」と思ったら、金色だという。どう見ても、ネクタイは赤だし、金色は無い。聞けば、ネクタイの斜めに入ったストライプの一部が、金色なんだそうな。わかんないよ! という訳で、私の西武で貰ったシトロエンシャープペンを貸すことにした。これは、金ではないが、真鍮が金色に見えなくもない。彼は喜び勇んで、それをポケットに入れ、仕事に向かった。
 数日後、「そう言えば、ラッキーカラーで、いい事あるの?」と聞いてみた。無いとな…。しかし、ラッキーカラーを導入していなければ、もっと悪い事になっていたかもしれない、という様な事を言う。なんというポジティブシンキング。
 だが、思い出した様に、「このあいだ、シャーペンをお借りした時に、『あるわけないよなぁ』なんて思いながら、たばこの自動販売機の釣り銭を見たら、100円ありました。ジュース飲んじゃいました。」だって。何で、それをすぐに私に話さない!(ブチ怒) 別に100円欲しい訳ではないし、ジュース飲みたい訳じゃない。財布の中には、ジュースぐらい飲めるお金はある(笑)。その気になれば箱買いだ(炸裂)。
 私は“いい話し”の一つも聞きたいだけなのだ。ましてや、自分が貸したシャーペンが(はっきり言って関係なくても)、役に立ったというならば、ちょっとは『いい事したかな?』なんて、気分になれるじゃないかぁ。
 「そりゃ…、良かった…。」と弱々しく言ったものの、正直、心から喜べなかった。私には“プチ幸せ”の“話し”すら回って来ないのか? その日は、元々乏しい仕事への情熱は、風前の灯火となった。無論、何をしたかなんて、覚えていない。ただただ、どんよりと、遣る瀬ないだけだった。(『やるせない』って、こんな漢字なんだぁ)

追記:幸せもん

 朝礼が終わるとKS貫氏は、応接セットに座り込んだ。聞けば、最初気持ち悪くて、それが過ぎると頭が痛くなったのだと言う。それも右だけ痛い。丸い体型の持ち主だ、脳硬塞に違い無い! と一瞬過ったのだが、とりあえず私の仮眠用のふとんを敷き、応接セットの座布団を丸めて、彼を寝かす事にした。
 U田課長が来て、彼に根掘り歯掘り聞く。「寝たか?血圧高いか?(血圧の)下はいくつで、上はいくつだ?どこが痛い? etc.」病人にそこまで聞くかなぁ、なんて思っていたのだが、一通りの診問(医師法違反容疑勃発)が終わると「こりゃぁやばい、救急車でも呼ぼうか?」ぐらいまで、話しが進んでいった。なんせ、KS貫氏の言動がおぼつかないのだ。
 意識はあるので、救急車の案はボツったのだが、病院には連れて行くことになった。「この辺だと、○×(病院)か△□(病院)ですかねぇ。」という課長に「私の行き着けの所にしましょう。」と提案した。早速、電話して状況を話し、診察時間の前でも、先生が来ていれば診てくれる様な段取りになった。私が連れて行こうと思っていたのだが、部長が行ってくれる事になった。保険証を持っていないというので、『とにかく』と思って、私の診察券を持たせる事にした。どんなに怪しい奴でも、私の診察券を持っていけば、絶対に診てくれる(はず)、という魔法の診察券だ。
 (部長の話しによれば)病院に着いたのに、携帯電話を切っておかなかった為に、せっかく呼ばれても、電話に出てしまい、後回しにされたこと数回。診察が終わると、余裕が出たのか、(事もあろうに)私の診察券をほっぽり投げてしまったらしい。それを拾って持って帰ってきてくれたのは、言うまでもない部長だ。
 10時過ぎには帰ってきた。もの凄く早い。普通に待っていたら、午前中に診てもらえるかどうかのはずだ。きっと順番をすっ飛ばしてくれたに違い無い。まっ先に私のところに来てくれたのは、部長だった。事情を知らない私は一瞬、(KS貫さんはまだ具合悪いのかな)と思ったのだが、次の瞬間、それは吹き飛んだ。「肩コリでした。」軽い脱力感と笑いが込み上げてきてしまった。「いやいや、笑えないって、穴があったら入りたかったですよぉ。」「(KS貫氏の)首絞めていいですか?」「どうぞ、どうぞ。」という会話が乱れ飛んだ。
 しばらくして彼が来た。再び笑いが込み上げてきて、何を話したか、覚えていない。後で聞いた話しだが、『しばらく』というタイムラグがあったのは、(事もあろうに)事務所で油を売っていたらしいのだ(怒)。事務さんとおしゃべりのひとつもしていたそうな、私は仕事してたのに(激怒)。
 よくよく考えてみると、言動がおぼつかなかったのは、いつもの事ではないか…。さらに訳わかんなくなっていただけである。
 「あぁー、腰の辺りが痛いなぁ。」なんて言ったら「湿布薬ありますよぉ。」だって。まぁ、彼なりに気をつかっているのかもしれないが…。私が激具合悪い時に、KS貫氏に「医者に行きたいけど、もう行けないしなぁ」って言ったら「えぇー、何でですか? あそこって、いつも行ってるんですよねぇ。」、「恥ずかしくって行けねぇんだよ(怒)」って言ったら、顔を隠していた。ほんとだぞ、あの先生はいつまでも覚えてるからな。
 今回のハズレくじを引いたのは、Y岡専務に「社長、気の毒だよなぁ」と言われてしまった部長と、主治医に会わす顔が無くなった私である。肩凝りの部下を病院に連れていかなくっちゃぁならない部長…。また、部長の腸がねじれる日も近いのか? 私も彼をグーでぶつ日が近いのか? なんにしても、ここまで無事に生きてこられたというのは、ぶっちぎりの幸せもんである。
※所属会社が違うのでY岡専務から見ると、我が部長は社長である。

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(C)2005 Richard Feynkid