R.Feynkidの
ぶやき

俺に話しかけんじゃねぇ…ってば

 (何で俺なんだよっ!)
 結構、そう思っている。私の事を知っている人は、不思議に思うかもしれないが、私は『人見知り君』なのだ。だから、人に話しかけられるのが、非常に苦手だ。もちろん、自分から話しかけるなんて、もってのほかで、そんな事をしなくてはならない状況に陥ると、胃酸が出過ぎて、身体に悪い事請け合いである。電話をかけるなんてのも、寿命を縮める大きな要因だ。普段から話しをしている人なら、まだいいのだが、それでも、話しかけるタイミングを見計らってからの出陣となる。私は、誰にでも気軽に話しかける『冗談連発君』に思われがちだが、いつもタイミングを、今か今かとマゴマゴしている。そんな私に、世間の、と言うよりかは、通りすがりの人達は、何の遠慮も無く話しかけてくる。
 バスを待っていると、「○○○公団行きは、この時間無いのよねぇ。」なんて、後ろのおばちゃんが話しかけてくる。「はぁ、そうですねぇ。」と力無く応えるぐらいしかできない。しかし、あんたの相手は、後ろのおねぇちゃんじゃぁダメなの? その後も「仕事?」とか聞いてくる。そんなどうでもいい事に、ちゃんと応える他、なすすべが無い。バスを待っているんだから、その場から逃げられない、卑怯だぞ! おばちゃん。(って程でもないか。)
 駅のホームで電車を待っていると、「○○には行きますか?」なんて聞いてくる。あんただって、ある程度、当たりをつけて、このホームに立ってるんでしょ? っつーか、○○方面って書いてあるじゃん。もんの凄く他に人がいるのに、なんで俺に聞くの? しかし、「行きますよ。途中で快速に乗った方が、早く着きますよ。」なんて、アドバイスまでしちゃってる。うちの最寄り駅は、快速が止まんないから、ずっと鈍行なのにぃ。
 交差点で歩行者信号が青になるのを待っていると、「市立病院はどこですか?」なんて聞いてくる。もんの凄く他の人が一緒に待っているのに、なんで俺なの? っつーか、目の前に在んじゃん。目の前に看板が立ってんじゃん。しかし、「あれですよぉ。」なんて、ゆび指して、ニッコリまでしちゃってる。そうこうしているうちに、また信号が赤になりそうだ。走れ!
 ハードオフで、ジャンクを掻き回していると、ケーブルを片手に、「これ、スキャナのケーブルですか?」なんて聞いてくる。しかも、私を他のコーナーまで連れて行って、「このスキャナーと同じ端子なんです。」わたしゃぁ、店員じゃないし、ジャンクコーナーは基本的に質問不可でしょ。っつーか、解んないなら、ジャンクはダメだよ。しかし、「んー、このスキャナーはSCSIだし、ジャンクで出てくるケーブルは、大体モデムケーブルで、たぶんこれはモデムですよぉ。クロスケーブルだから、使えませんよ。」なんて、説明までしてあげちゃったのに、「普通に買うといくら位ですか?」だって。まだ足りないのかよ! でもやっぱり、「そうですねぇ、1,500円位ですかねぇ。」って、応えちゃってる。彼は肩を落として、去っていった。私が悪いんじゃぁないよねぇ?
 何もかもうまく行かなくて、激不機嫌な状態で、買い物帰りの自転車に乗っている時、もちろん人を2・3人殺しそうな形相だったはずの時の事だ。「○○○駅行きのバス停はどこですか?」なんて、ナイスミドルの夫婦が聞いてきた。他に人がいないから、藁をも縋る思いで聞いてきたのだろうが、殺人鬼の形相の私に、しかも自転車を止めさせてまで聞いてくるとは、いい度胸である。っつーか、殺されるより駅まで歩いた方が、身の為ではないだろうか。危険な世の中である。しかし、「あの信号を渡って、って言ってもこの道路を渡っちゃダメですよ。斜の道路を向こうに渡るんですよ。そしたら、右に行くとありますよ。」無茶苦茶いい人じゃん→私。殺人鬼の形相なのに(笑) 2・3人殺すどころか、2人にも親切にしちゃったじゃん。おかげさまで、そんないい人の自分にも腹が立ち、更に不機嫌になってしまった。プンプンである。
 番外編としては、犬まで喜んで近寄って来る。「いい人、めっけ!」と言わんばかりに、ヘッヘッヘッ エヘッ(はーと)と、一目散に私の足下まで来るのだ。実に迷惑。何と言っても、私は犬は苦手なのだ。幼少の頃、ジョンに前足でコロコロと、珍しいおもちゃとして遊ばれてしまったらしく、いや、微かに記憶があるぞ、それがきっかけ(だと思う)で、犬には恐怖というものが、まとわり付いているのだ。
 寒い冬の夜、私が寝ていると、庭先でジャランコジャランコと、鎖が引きづられるような音がする。(何じゃい、コラッ)と思い、角棒を持って、玄関から出ると、デカイ犬が、エヘッ(はーと)と、おすわりをしていた。犬からしてみれば、「やったぁ、これで今夜は暖かいぜぇ。」と思ったのかもしれないが、相手は私である。次の瞬間、玄関のドアは、バタンと閉った。犬は外で、くうぅーんと鳴いた(『泣いた』が正しいかもしれん)が、無理だ、無言でお引き取り願った。
 私は常々『俺に話しかけんなよっ!』というオーラを出しながら生きているつもりなのだが、世間はそうは取らないらしい。眼鏡を外すとだけど、「目つき、すんごく悪いよ」と言われた事もあるし、池袋でなんか、どう見ても遊び人のにいちゃんに、すれ違いざま避けられちゃったりする形相である。どう考えても自分では、話しかけられ易い人物ではないはずだ、と思っているにもかかわらず、失礼なまでに、話しかけてくる。眉間のシワがモールス信号で『相談所』にでもなってるのだろうか。それとも、眉毛がQRコードになっていて、携帯で読むと、『この人いい人。道案内から諸々、よろず相談請け負います』なんて出てくるんだろうか? だったら括弧付きで、『お年頃の女性限定』とでも付け足しておいていただきたい。と言う訳で、頼むから不必要に話しかけないで欲しい。ん? あなたにとっては必要なのか…。

追記:どんな顔してるんだろう?

 いつぞやも、「西友はどっちですか?」と聞かれてしまった。しかし、『西友なんて、どっちらけ方向じゃん。どうすれば、こんな所歩いてるんだよ。』って感じだ。でも、「あのT字路の信号を左に曲がって、しばらく…、けっこう行った右側にありますよぉ。」と、またしてもニッコリまでしてしまった。どんな、いい人な雰囲気と顔をしているんだ、私は…。
 が、しかし、な事があった。良く言えば、『親しみのある顔』かもしれないが、悪く言えば、『冗談面』なのではないだろうか? と思わずにはいられなかった。
 事の発端は、会社の給湯室の棚が、地震の時に開いて、危険かもしれない、という事で、ストッパーを取り付ける事になったのだ。そして、その作業中に、アルミ部分に小穴を開けなくてはならなくなり、仕方なく、電動ドリルの出番となった。不馴れな工具に、少々ビビリながら、さぁ開けよう、とドリルがうなりを上げたところに、関連会社の事務さんであるヒラリー女史(仮名)が通りかかったのである。その時私を見て、「ううぅ、真剣な顔。」と彼女。
 『普段、どんな顔してるんだ?』途端に不安になった。真剣な顔の時が、今までに全然無いのか? 思い返せば、作業中以外は、真剣な顔はないと思う。しかし、作業中は基本的に孤独な作業なので、顔を覗き込まれる事はないので、その時の顔は知られていない。たぶん真剣な顔だと思うのだが…。そして、作業の合間や、その他の時間は、やたらと冗談を言ったりしているので、真剣な顔はない。というか、冗談面でしかない。
 「うん、ちょっと恐い」と半疑問形で、電動工具にビビッいて、そんな顔になっている事を伝えようとしたが、うなりを上げるドリルと、ショックで心中穏やかではなくなってしまった。目は泳ぎ、ドリルの刃先も泳いでしまっている。どうにか、うまく穴は開いたが、私の心の空洞化は避けられない。熱い濃くて苦いブラックコーヒーだけでは、冗談面は直りそうもない。いや、少しはキリッとしてみようか…。

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(C)2005 Richard Feynkid