R.Feynkidの
ぶやき

「その正体は?」って赤外線じゃないの?

風水財布  で、2003年11月に改正景品表示法が改正され、「開運」「金運」といった類の神秘的な内容の表示は、裏付けが必要になるそうだ。という事は、今までいろいろ笑わせてくれた「未知のエネルギー系」の広告が、今後は規制され、不当表示扱いになってしまうのだ。ググッと減ってしまうのだろうか? いやいや、科学的裏付けか、統計的に客観性が確保された体験談が示せれば良いらしいので、ますますパワーアップするかもしれない。体験談はどうにでもなるだろう(違法だが)が、科学的裏付けをしはじめると、今後も笑わせてくれるだろう。
 という訳で、笑えなくなるかもしれないので、手元にとっておいたチラシから、「風水・○○○サイフ」の登場である。伏せ字にしたのは、別にひとんちの商売の邪魔をする気はないからだ。
 「科学者の所見 手をかざすと熱く感じる!? その正体は何だ?」と題された全文は以下の通り。
 『風水・○○○サイフ』が発する風水パワーの全容解明へ向けて、中国※1の著名な科学者・陳秀全博士が実験を行いました。これは風水パワーを科学的にとらえようとする初めて※2の本格的な試みで、世界中の物理学者や超自然現象研究家の注目※3を集めました。博士は、サイフから時々熱い霊気が感じられるという体験者の声※4に着目。サイフに、ある物質※5を近づけた時に起きる、空間の分子レベル※6での反応をキャッチすることに成功したのです。それは明らかに高周波のエネルギー※7が発生しており、「このエネルギーが運気の流れ、とくに金運に何らかの影響を与えているのではないか」※8と博士は見解を述べています。最先端科学※9により、風水パワーの秘密が少しづつ解明されようとしています。

(写真中央下の文) : ▲『風水・○○○サイフ』全体から高周波エネルギーが発生している様子を、特殊な赤外線カメラ※10がとらえた瞬間。

 いろいろ疑問、その他が湧いて出てくる。順に見てみよう。
※1:なんで中国なの? 日本じゃ相手にされなかったのか?
※2:本当に初めてか? 世界中、この手は好きだから、随分やっているはずだぞ。
※3:物理学者が注目したとしても、「冷ややかな」という形容詞が付く思うが。
※4:科学者なら、「霊気」なんて言葉に着目しちゃぁイカンよ。
※5:この場合「手」か?
※6:「空間」は「分子」で構成されているのか? エーテルを復活させる気か! もぉ、戦前のレベル。
※7:赤外線なら、テレビ・ラジオや携帯電話の電波、といったものよりは、周波数が高いので、確かに「高周波」であるが、我々が目で見て認識できる「可視光線」よりかは「低周波」である。別に珍しいものではない。「高エネルギー」じゃないところが、かわいい。
※8:赤外線が金運に影響するなら、コタツでもひっくり返して、ギンギンに光らせておいた方が、この財布の比ではない、ものすごいエネルギーが発散されるから、ビルゲイツ級の金持ちになれるかも。
※9:赤外線カメラが最先端か?
※10:私が「赤外線」と言い切っちゃっている根拠。赤外線カメラは、基本的に赤外線しか撮れないもんねぇ。ちなみに「特殊」とは、「キラキラフィルター(実名は知りません)」をつけて撮ったという事か? 「本格的な試み」では普通こんなものつけないんじゃないかな。
 ザァーッと見てみてきたが、問題は、この赤外線写真での財布の写り方である。文章では、財布全体から赤外線が出ている事になっているが、肝心の財布は、黒っぽく写っているだけで、とても赤外線を発している様には見えない。財布の周りが、白っぽくなっているので、この場合、財布の後ろにあるものが発しているのであって、間違っても財布全体は、赤外線を発していない。財布の裏面が発しているという反論もあるかもしれないが、それでも全体ではない。誤りである。
 下の方に「手をかざしてみろ」と書いてある。「熱いエネルギー」を感じることができるらしいのだが、これは、そうかもしれない。本来熱は、光が反射するもので、反射する。という事は、キラキラな細工が施してある財布に、手をかざせば、人間が発する熱を、少しでも反射し、その人の手に熱を戻すだろう。もっとも、精神的な部分もあると思うが。
 そういえば、買わなければ、手もかざすことができないではないか。という人の為にも、90日間のお試し期間があるんだそうな。商売上手な事だけは、科学的(?)に証明された?

追記:12月5日付で公正取引委員会が、この風水財布に対して排除命令を出した。公取委によれば、体験談はウソだし、なんと陳秀全博士に到っては、実在もしなかったらしい(笑)。これでは科学的検証どころではない。「熱いエネルギー」は商魂だけだった様だ。

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(C)2003 Richard Feynkid